水道水フロリデーション研修 in 釜山第4回
 何回韓国にきても感じることですが、フッ化物の利用については、日本と比較して進んでいると言わざるを得えません。この事実をもっと日本の歯科保健関係者にじかに体験してもらうことを目的として実施していすが、それが今回で4回目となりました。 
 今後とも日本で水道水フロリデーションが実施(再開)されるまで、釜山研修を企画したいと思います。その際はメーリングリスト、ホームページでお知らせいたします。是非ご参加ください。とても満足できる研修になると思います。
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 第4回は、山内皓央NPO日F会議副会長とともに、福岡歯科衛生専門学校、埼玉県立大学保健医療福祉学部の学生、開業歯科医師、行政の保健師等様々な職種の方々が参加されました。参加された方々は、将来のわが国の地域歯科保健を担い、貢献することと思います。
今回は、
1.水道水フロリデーションを実施している蔚山(ウルサン)市の回夜(ホエヤ)浄水場
2.釜山市鎮区の保健所訪問
3.釜山国立大学歯学部訪問および韓国学生とのディスカッション
4.韓国と日本の水道水フロリデーションの状況比較(再掲載)
をご紹介したいと思います。
1.蔚山(ウルサン)市の回夜(ホエヤ)浄水場水道水フロリデーション状況
韓国の浄水場の中で、最も多い65万人分のフロリデーション水を供給しています。
このむし歯予防効果は、65万人がフッ素洗口を週1回あるいは毎日継続して実施するのとほぼ同じです。しかも、子供から高齢者まで、飲むだけでむし歯予防ができます水道水フロリデーションは最も公衆衛生特性の高いむし歯予防方法だということが実際にこの浄水場を見て実感できました。

@普及の経緯
1996年6月5日 
ウルサン参興自治連帯(代表イチェテク)が市議会に水道水フロリデーションの必要性について説明会を開催。
1997年5月21日
ウルサン市歯科医師会(代表キム・ホンソン)とウルサン参興自治連帯が市民の口腔の健康上場のために水道水フロリデーション事業の推進を市議会に請願。
1997年5月28日
市議会本会議で請願可決。
1998年9月1日
水道水フロリデーション開始。
A費用
設置費 53,400ウォン(国費9,600ウォン、市費43,800ウォン)
*設置時の国の負担額。現在では、
国は7割が費用を負担することになっています。
運用費用
年間1億ウォン。
住民一人当たりの年間費用153ウォン(日本円で13円)。
Bフッ化物添加法
液状のケイフッ化水素酸(H2SiF6、添加濃度0.6-1.0ppm(韓国の上水道基準は1.5ppm以下)。
添加方式は整数流量とフッ素濃度による複合比例制御。
濃度検査は、24時間自動測定器での測定


フッ化物添加装置システム。
ケイフッ化水素酸
の添加は、急速濾過法により浄水が完了した後、塩素添加の前に添加します。


ケイフッ化水素酸を入れるタンク。
1ヶ月で1つのタンクが空になります。

補助タンク。ケイフッ化水素酸が過剰に送られるのを防ぎ、一杯になると元のタンクに戻されるように設計されています。

自動でフッ化物濃度を測定する器械。
2つの浄水場があるので各2台づつ合計4台あります。

定量注入ポンプ。
一定量のケイフッ化水素酸が水道水に注入されています。
水道水フロリデーションの添加方式としては、粉末状のケイフッ化ナトリウムを注入する乾式と、液状のケイフッ化水素酸を注入する酸注入式があります。
今回の浄水場は、後者であり、メリットとしては、乾式に比べ、濃度管理が容易である、費用が安いです。
参照:日本におけるフッ化物製剤(第9版)
http://www.nponitif.jp/newpage171.html

乾式の浄水場については昌原市(旧鎮海市)の石洞(ソクトン)浄水場へ
http://www.nponitif.jp/newpage161.html
2.釜山市鎮区の保健所訪問
韓国の保健所では、日本と違い、市町村保健センターがありません。また、学校歯科医制度もありません。そのため、保健所が地域や学校の保健事業を一手に引き受ける機関となります。
各保健所には、歯科医師、歯科衛生士が常勤しています。今後保健所から独立し、口腔保健センターが別に設置されるらしい。口腔のみのセンターということで、いかに韓国が口腔保健に力を入れているかがわかります。 
学校歯科医制度はないが、各学校には
口腔保健室があり、保健所の歯科医師、歯科衛生士が各学校を訪問し、シーラントやフッ化物歯面塗布、フッ化物洗口液の配布を実施しています。2012年からシーラントが保険適用されることから、シーラントの業務は一般診療所へと移行しているとのことでした。
(保険適用になったものの、受診者は一部負担金を払うわけで、学校で実施するほうが公衆衛生的な効果は高いと思いますが、金鎮範先生もそのことを気にされてました。)
釜山鎮区保健所の歯科保健事業計画

・口腔保健教育と口腔保健週間行事広報

・フッ化物洗口事業

・フッ化物歯面塗布事業(幼稚園、小学校)

・学校口腔保健事業(口腔保健室で歯磨き教室)

・高齢者フッ化物歯面塗布、スケーリング事業

・口腔保健センター

保健所内にある歯科予防処置室。
シーラント、フッ化物歯面塗布
スケーリングなどが実施されています。
昌原(チャンウォン)市の保健所についはこちらへ
http://www.nponitif.jp/newpage161.html
3.釜山国立大学歯学部訪問および韓国学生とのディスカッション

釜山国立大学訪問では、施設の見学と、金鎮範先生の水道水フロリデーションに関する講義を拝聴しました。また、釜山の歯科衛生士学校の学生も参加し、フッ素についてディスカッションするという試みもされました。
以下、金鎮範先生の講義内容の概要をご紹介いたします。

国家口腔保健プログラムとして、フッ化物を使うむしば予防プログラムは水道水フロリデーション、フッ素洗口 、高齢者に対する専門的歯口清掃管理後のフッ素塗布プログラムです。シ-ラントもむし歯予防の重要なプログラムです。

水道水フロリデーションプログラムは1981年始めて現在24浄水場で、20地域で人口308万人を対して行っています。それは韓国総人口の6.2%です。永久歯う蝕予防效果は対照群に比べて30-40%です。 対照群も大部分フッ化物入り歯磨剤を使っています。
今年に仁川(インチョン)で55万市民を対象にフロリデーションを開始する予定です。 仁川(インチョン)では去年に世論調査をした結果、賛成が58.7%、反対が28.6%なのでフロリデーションを施行することに決定をしました。

フッ素洗口プログラムは韓国口腔保健協会が1976年からモデルプログラムとして実施して、国の政策では1983年から開始しました。フッ化物費用は政府が負担しています。現在、約3,800小学校で約200万人の子供がフッ化ナトリウム溶液で毎週1回うがいしています。永久歯う蝕予防效果は対照群に比べて20-30%です。

フッ化物入り歯磨劑の使用者率(2000年) は、97.4%です。

シーランプログラムは 保健所の歯科医師と歯科衛生士によって、小学校子供の第1大臼歯を対象して行っています。政府の政策事業として2002年開始しましたが、一部地方自治体はそれ以前から始まりました。費用は国か負担して、村では小学校1年生/2年生全員、都市では経済的貧しい小学校1年生/2年生の学童に、約 27万人を対して行なっています
2009年12月からシーラントは健全な第1大臼歯を対して、国民健康保険適用になりました。第2大臼歯は対象外てす。

韓国政府は、再びフロリデーションプログラムの必要性、むし歯予防効果、安全性などについて、TV、地下鉄、バスなどの媒体手段を用いて市民への啓発普及のための教育を行っています

韓国の新幹線KTXの月刊雑誌広告。




バス、地下鉄の広告物。
お水一杯の奇跡
水道水フロリデションが奇跡を作ります。お水一杯が虫歯心配をなくします。お水一杯が歯の強国を作ります。
韓国で公衆口腔保健プログラムで関係する法律は国民健康増進法と口腔保健法です。

国民健康増進法の第18条には、水道水に対するフッ化物濃度濃度調整事業があります。国民健康増進法施行令(大統領令) 第23条には、小窩裂溝填塞事業、 2. フッ素洗口事業等を規定しました。
国民健康増進法施行規則は市、道知事、郡守区庁長の水道水フロリデーション・フッ素洗口事業等の口腔保健事業の義務を規定しています

口腔保健法は水道水フッ素濃度調整及びフッ素洗口を規定しています。法律の提出者は黄圭宣(Hwang, Kyu-Son)議員です。彼は1960年 ソウル大学 歯学部を卒業して歯科医院も開業していました。国会で議案提案は1997年で採択は1999年12月、施行は2000年 9月でした。 わかい歯医者達の健康社会の為の歯科医師会は1994年から「公衆口腔保健法」を研究して「国民健康増進法」で反映しましたけと充分ではなかっとして「口腔保健法」を推進して黄圭宣議員が受諾して、国会に提案しました。口腔保健法の項目は口腔保健事業の評価、水道水フロリデーション事業、学校口腔保健事業、 事業所口腔保健事業等です。
第5条の規定による口腔保健事業の基本計画では次の各号の事業が含まれなければならない。 2.水道水フッ素濃度調整事業 3.学校口腔保健事業
第3章水道水フロリデーションフ事業では、第10条(水道水フロリデーションフ事業の計画、及び施行)
で水道水フロリデーションを施行しようとする市、道知事、市長、郡守、区庁長また韓国水資源公社社長は次の事項が含まれる事業計測をしなければならない。1. 浄水施設と給水人口現況、2. 事業担当マンパワーと予算、?3. 使用しようとするフッ化物製剤とフッ化物添加施設、4. 維持すべき水道水フッ素濃度等です。
第10条(水道水フロリデーション事業の計画、及び施行)の第2項で市・道知事、市長、郡守、区庁長、または韓国水資源公社社長は、公聴会、世論調査等を通して関係地域住民の意見を積極的にまとめ、その結果によって水道水フッ素濃度調整事業を行うことができるとあります。また、第3項で保健福祉部長官は第1項の規定による事業計画の策定、施行に必要な技術的、財政的支援を行うことができます
第11条(水道水フロリデーションフ事業の管理)第1項で水道水フロリデーションフ事業を施行する市・道知事、市長、郡守、区庁長と韓国水資源公社社長(以下、『事業管理者』と称する)は次の各号の事項を管掌する。 1.フッ化物添加施設の設置と運営 2.フッ素濃度維持の為の指導、監督 3.フッ化物添加マンパワーの安全管理 4.フッ化物製剤の保管と管理に関する指導、監督 第2項 事業管理者は水道水フッ素濃度調整事業と関連する業務の中で、保健福祉部令が定める業務を上水道事業所長、または保健所長に指示できるとあります。

みなさんとても熱心に聞いてました。



学生同士のフッ素に関するディスカッション
日本語、ハングル語、英語で苦戦しながらディスカッションしていました(笑)。
ちなみにフッ素はハングルで「プルソ」です。
4.韓国と日本の水道水フロリデーションの状況比較。
最後に、我が国での問題点を探るため、韓国と日本の水道水フロリデーションに関する比較をしてみました。
今後水道水フロリデーションを日本で実施するためには、PR活動の推進、法、推奨などの環境整備が必要になると思います
比較表に関するお問い合わせはこちら
NPOnitiF-owner@egroups.co.jp

韓国と日本の水道水フロリデーションに関する比較表ダウンロードはこちらをクリック
韓国と日本の水道水フロリデーションに関する状況比較 2013.3.
韓国 日本
実施状況 1981年開始
2012年:308万人(全人口の6.2%)に普及
仁川市(人口270万)の一部地区(約80万人)で開始予定。
(米軍基地でも実施中)
現在実施なし
過去3ヶ所で実施したが、いずれも中止
(米軍基地は実施)



中央政府 法律
1995年に施行された国民健康増進法に水道水フロリデーションが明記
2000年に施行された口腔保健法に水道水フロリデーションが明記
支援
水道水フロリデーション実施の際、国が水道水フロリデーション装置、設置費用の70%以上負担、実施後のフッ化物購入費の70%以上負担*
*:2009年以前は50%以上

法律
2000年に施行された健康増進法、2012年に施行された歯科口腔保健法、その他の法律に水道水フロリデーションに関する記載なし。
支援
2000年、厚生省(現厚生労働省)は水道水フッ化物添加法について市町村からの要請があった場合、技術支援をすることを表明
水道水フロリデーションの費用負担等の援助はなし。
地方自治体 旧昌原市の例
水道水フロリデーションに関する住民調査が実施され(賛成約60%、反対約5%)、その後、水道水フロリデーションに熱心な議員が他の議員の同意を求め、議会で実施が議決された(投票ではない)。
旧昌原市の例
水道水フロリデーションに関する住民調査が実施され(賛成約60%、反対約5%)、その後、水道水フロリデーションに熱心な議員が他の議員の同意を求め、議会で実施が議決された(投票ではない)。
蔚山市の例
1996年6月5日にウルサン参興自治連帯(代表イチェテク)が市議会に水道水フロリデーションの必要性について説明会を開催され、1997年5月21日にウルサン市歯科医師会(代表キム・ホンソン)とウルサン参興自治連帯が市民の口腔の健康上場のために水道水フロリデーション事業の推進を市議会に請願した。1997年5月28日に市議会本会議で請願可決され、1998年9月1日に水道水フロリデーション開始した。
韓国の地方自治体のシステムと同等なことから、水道水フロリデーション導入の際に参考になる。





















住民 昌原市の水道水フロリデーションに関する住民意識調査は、賛成約60%、反対約5%



・吉川市民祭り参加者(2008年、239名)70.3%はフロリデーション実施に賛成
・冨岡甘楽地区における住民調査(2009年、1〜4歳児保護者1,006名)、地区により76.4%〜86.6%はフロリデーション水利用したい。
推奨団体 大韓歯科医師協会
大韓医師協会
環境運動連合(2005年安全性に問題なし)
(韓国で最も影響力のある環境運動団体)






・厚生労働省(2000年)「水道水フッ化物添加法について市町村からの要請があった場合、技術支援を行う。」
・日本歯科医師会(2002年)「フッ化物応用(水道水フッ化物添加)に関する見解」
・日本口腔衛生学会(2002年)「今後のわが国における望ましいフッ化物応用への学術支援」、(2011年)第60回総会テーマ「健康社会と水道水フロリデーションを目指して」
水道事業者 以前は粉末タイプだったが、最近は運搬、タンク注入操作、濃度調整の簡便さから液状タイプのケイフッ化水素酸を使用。フッ化物濃度調整は、塩素濃度の調整と同程度の技術で、簡単である。 塩素注入以上の技術的問題は無いこと、どこの国でも同じと思われるが、日本の水道事業者はそのように認知していない。

水道水フロリデーション
第4回韓国水道水フロリデーション研修が無事終了ましたので、お知らせします。
韓国では1981年から水道水フロリデーションが実施され、2011年で30年がたちました。
2012年では、308万人(インチョン市が実施されれば333万人)の人が水道水フロリデーションの恩恵を受けています。

世界の水道水フロリデーション状況はこちらへ
http://www.nponitif.jp/newpage165.html

過去の韓国の水道水フロリデーション研修情報についてはこちらをクリック
水道水フロリデーション
水道水フロリデーション