水道水フロリデーション
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National Research Council Issues Report on EPA Standards for Fluoride in Drinking Water

 

概要

2006322日に、米国国立アカデミーの米国研究評議会(NRC)は、飲料水中に含まれる天然由来のフッ化物濃度(第一次)最高レベルに関する米国環境保護局(EPA)基準の評価について、新しい報告書を公表しました。この報告書は、全国的なメディアの取材を受け、公共水系中の(第一次)最高フッ化物レベルに関する政府基準の変更が必要かどうかを決定するため、(今後)EPAによってレビューされることになります。

 

NRCの報告書は、飲料水中の天然由来フッ化物に関連する毒性学、疫学および摂取データをレビューしています。この報告書は、他のフッ化物源(例えば、食品、飲料品、歯科製品)のフッ化物量に関する情報も示しています。EPAは、飲料水中の第一次許容最高濃度に関する政府の既存の基準について、通常の定期的な調査としてNRCのレビューを要求しました。NRCは、飲料水中に現在許容される天然由来のフッ化物濃度について、健康上のリスクがあるかどうかを調査するよう求めました。とくに、この報告書は飲料水中の天然由来のフッ化物として4ppm(4mgF/と同等値)に設定される第一次上限濃度目標値(MCLG)について焦点が当てられました。

 

この報告書では、NRCが歯のフッ素症の割合と症度を評価し、4ppm程度のフッ化物を含む飲料水地域における小児の10 %に重度の歯のフッ素症がみられたことに比べ、2ppmでは重度の歯のフッ素症は基本的に発現しなかったことを示しました。これらの濃度は、40年以上にわたって齲蝕予防のために米国公衆衛生サービス(U.S. Public Health Service)にて確立された至適フッ化物濃度レベル(0.71.2 ppm)よりも有意に高い濃度です。NRCの報告書は、天然由来の高いフッ化物濃度に関連したその他の可能性のある健康上のリスク(例えば、筋肉骨格系と内分泌への影響、遺伝毒性、発癌性、生殖と発育への影響、神経毒性と神経行動学的な影響)も調べました。

 

報告書にはさらなる研究が必要であると記されていますが、天然由来の高いフッ化物濃度は、歯のフッ素症のリスクファクターであり、個人によっては骨折のリスクを高める可能性や骨のフッ素症の可能性があるかもしれないという今まで受け止められてきた結論を追認したものでした。このレビューを基に、NRCの委員会は、飲料水中の天然由来のフッ化物濃度について、現在の第一次上限濃度目標値(MCLG)である4ppmから下げるべきであると勧告しました。

 

フッ化物イオンは、元素であるフッ素から生じており、この豊富な天然元素は地殻と海洋に含有することから土壌と水源に認められます。全ての水源には微量のフッ化物が含まれます。米国では、地下水におけるフッ化物の天然レベルは低濃度(1ppm未満)から4ppmを超える範囲にあります。米国の公共水系はEPAによって監視されており、地域の水系は4ppmのフッ化濃度レベルを超えないように求められています。米国国民のうち、概ね20万人と推計される少数人口では、飲料水中の天然フッ化物濃度レベルがEPAの現在の上限である4ppmを超える給水を受けています。今日、米国の1億6千万人以上(現在1億7千万人)は、至適フッ化物濃度の(公共)水系から飲料水を受けています。

 

ここで最も重要なことは、齲蝕予防のために至適レベル(0.71.2 ppm)に調整された公共水系となるように、フッ化物濃度調整は十分に確立された方法であり、NRCの報告は地域の水道水フロリデーションの安全性あるいは効果について評価していないことです。

 

Peer-reviewedの証拠の集積に基づいて、齲蝕予防手段として安全かつ効果的な至適濃度0.71.2 ppmに調整された地域の水道水フロリデーションをADAは支持します。フッ化物、水道水フロリデーションとNRCの新しい報告書に関する追加情報を得るためには、http://ada.org/prof/resources/topics/fluoride.aspを訪れて(閲覧して)下さい。


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